テト【ネコの晩年】

女将のひとりごと

昔飼っていた猫の晩年のお話です。

blog の過去記事を整理していて出てきた記事ですが、感慨深いものがあるので、少し手直ししてこちらにも掲載することにしました。

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18歳の猫

我が家のお猫様『テト』をお風呂に入れました。
彼女は18歳で、もう化け猫の域なのですが、実はかなり弱っていて、時々点滴を打ってもらいに獣医さんへ連れていっています。

最近の彼女は、舌をしまうことができなくなってしまいました。
いつもベロをチョロっと出したままで、そこら辺をウロウロするので、思わぬところにヨダレが落っこちていてびっくりしたりします。

彼女自身も放っておくと、自分のヨダレで『ガビガビ』になってしまうので、お風呂に入れてあげるわけですが、あまり抵抗もせず、されるがままになっています。
昔はお風呂に入れると引っ掻こうとするので、完全武装してお猫様の入浴に臨んだものですが、今は無抵抗で、

この子も年をとったんだなぁ…

と実感します。

少し寂しいです。

老醜ろうしゅうを晒す―という言葉がありますが、以前私は、これは人間だけにあてはまるものだと思っていました。

若葉は美しく、枯れ葉もまた美しい。
動物だって毛皮があるので、実際若いのか年老いているのかわかるものではなく、大抵可愛いなぁと思います。

人だけが若さと老い、そして美醜にとらわれる悲しい生き物なのねぇ…

と、何か悟ったような気分になっていましたが、それは頭の中で考えて納得していただけで、実際老いて、だんだんと崩れてゆくテトを見ていると、決して人だけが特別な存在なのではなく、生き物はみんな等しいものなのだな、と思います。

それとも、美しいとか醜いとかいうのも、人の心がそう感じるだけなのだから、やはり人間だけにあてはまるものなのでしょうか? だとしたら、万物の霊長は他の生き物に比べると、随分と面倒臭いことの多い生き物ですよね。

猫は自分の最期を誰にも見せないといいます。

以前、我が家で飼っていた『ふく』という猫も、ある日突然、家に帰ってこなくなりました。
おそらく、どこかでひとりで、ひっそりと息絶えたのだろうと思います。

テトの話に戻ります。

彼女は点滴を打ってもらうと、しばらくは元気で、お向かいの庭まで遠征してひなたぼっこをすることもあります。
姿が見えないと、ちょっと焦りますが、おそらく彼女は我が家で最期の時を迎えるでしょう。

彼女にとってそれが幸せなのかどうかはわかりませんが、私たち家族はやはり、家で看取ってあげたいと思っています。
それも、人間のエゴなのかもしれませんね。

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訃報

テトがいなくなりました。

彼女がいなくなってから、45日になります。

「彼女は家で最期の時を迎えるでしょう」と書きましたが、そうはなりませんでした。
やはり、ネコは一人で最後の旅に出るのですね。

母が仏壇の仏様の湯飲みを洗っていると、割れてしまったそうです。
母は

母

きっとその時にったんやね

と言います。
私もそう思います。

去年の夏、犬が亡くなった時は、ちゃんとペットのお葬式をしてくれる所へ連れていくことができたのですが、彼女は連れていくことができません。
ちゃんと成仏できるように、百箇日が過ぎたら、供養してあげようと思います。

冥福を祈ります。

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大往生

また、どんでん返しがありました。
何と! 驚いたことに、テトは実は大往生していたのです。

最近、飼っていた犬が亡くなった家の奥さんと、ウチの母が立ち話をしていた折、

母

実はウチの猫も出ていって帰って来えへんねんけど、年も年やし舌ガンやったから、たぶん亡くなってんやろなぁ。舌出したまま、しまわれへんようになってしもててな

と話した途端、その奥さんが

奥さん
奥さん

その猫白い首輪して、鈴つけてなかった?

と尋ねたのです。

まさしくテトでした。

彼女は、出て行ったものの、帰る途中で体力が尽きてしまい、その奥さんの家の前で、じっとうずくまっていたのだそうです。

相当衰弱しているテトを見て、奥さんは行きつけの獣医さんに連れていってくれました。

そこの先生から、

獣医さん
獣医さん

病気もありますが、もう寿命ですね。もって、あと2、3日でしょう

と言われたそうですが、言葉通り2、3日点滴を受けた後、まもなく息を引き取ったそうです。

野犬に襲われるでもなく、のたれ死ぬでもなく、大往生でした。
本当に良かったです。
命日は10月26日でした。

そこの獣医さんは、動物が亡くなると、宝塚にある動物霊園を紹介して下さるそうで、奥さんは

奥さん
奥さん

無縁さんで悪かったけど、一応供養してもらっといてん

とお葬式まで出してくれたそうです。
獣医さんも、その奥さんの飼い猫でないなら…、と半額で治療して下さったそうです。

尊いことです。
ありがたいことです。

殺伐とした世の中ではありますが、まだまだ良い人、優しい人はたくさんいるんだなぁ。
人の世も捨てたものではありませんね。

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