バス運転手の驚きエピソード:公務員のお役所仕事から見える事故対応の舞台裏

女将のひとりごと

バスの運転手さんをしていた友人がいます。
現在は脱サラして会社を経営していますが、その彼が公務員だった時のお話です。

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公営バスの事故事情

その友人から聞いた話なのですが、バスの中で人がコケてケガをしたら人身、モノが破損したら物損、共に事故なのだそうです。
つまり、お年寄りがバスの中でこけて骨折でもしようものなら人身事故で、スイカが転げて割れてしまえば物損事故です。

点数を引かれるのは、そのバスを運転していた乗務員さんです。
殺生な話です。

ですから、杖をついたお年寄りが乗ってきたら、そりゃあもうドキドキで、すごーく慎重に発進・停車します。

ちなみに、電車には道路交通法は適用されないので、電車でコケてケガをしても、事故にはならないそうです。

あわや人身事故

ある雨の日、その友人の運転するバスに、杖と雨傘を持ったおじいさんが、ふらふらと乗ってきたそうです。
そのおじいさんは、席が空いているのに座ろうとせず立っていました。

友人はすぐに

おじいちゃん、席あいてるから座って下さいね

と声をかけたのですが、そのおじいさんは

おじいさん
おじいさん

結構、わしゃ立っとる

と座ろうとしません。
再度、彼は着席を勧めましたが、

おじいさん
おじいさん

立っとる!

と、がんとして譲りません。
友人のドライバー君は泣きそうな気分で、仕方なく発車しました。

細心の注意を払って、そろそろと発進、停車を繰り返していたのですが、えてしてそういう時に限って邪魔が入るものです。
発進したバスの前に、乗用車が急な割り込みをしかけてきました。
ブレーキを踏んで停車、すぐにおじいさんの方を振り返ると、バッタリと床に突っ伏しています…。

だ、だいじょうぶですかぁ~?

おじいさんは、顔の横をちょっと切ったらしく、少し血が出ています。
大したことはなさそうですが、やはり事故係を呼ばねばなりません。

じっとしててな、今事故係呼ぶから…

おじいさんに声をかけながら、今まで事故歴のなかった友人はとってもブルーな気分でした。

大岡裁き

他の乗客にみんな降りてもらい、やってきた事故係と共に、おじいさんと彼は警察へ事情聴取されに行きました。

警察官
警察官

おじいちゃん、何で座らんかったんや?

おじいさん
おじいさん

雨でコートが濡れとったさかい、ワシが座ったら次座った人に迷惑がかかる

警察官
警察官

せやけど、おじいちゃん。他のお客さんみんな降りなアカンようになってしもたがな…

おじいさん
おじいさん

ほんまに、かえってエライことになってしもてすんまへん

警察官
警察官

ほんで、車が割り込んだ時以外の急停車とか急発進はなかったんやね? そうやなかったら、運転手さん処分受けなアカンようになるねんけど?

おじいさん
おじいさん

そんなことありません! 運転手さんはなーんも悪ないです! 座れ言われたのに座らんかったワシが悪いんです。そんな申し訳ないことありまへん!

警察官
警察官

よっしゃ、ケガもたいしたことなさそうやし、こんなん事故ちゃう! もう帰ってよろしでっせ。

何と、事故にはなりませんでした。

帰り際にその警察官が言った言葉は

警察官
警察官

良かったな。ワシお前のところの事故係、大っ嫌いや!(笑)

でした。
見事な『大岡裁き』です。

普通こういう場合は、個々の事情はどうあれ、たいてい事故にされてしまうそうなのですが、私の友人は非常にラッキーでした。

なんでやねん…

ところで、事故係というのは、事故にするのが仕事なのだそうです。

何故、そうなるのかというと、とりあえずこちら(公務員)側が悪いということにして、賠償しておけば、『後々ややこしくならないから』だそうです。
ふざけた話です。

良かったー。オレ、警察がこんなにありがたいと思たことないわ…。捨てる神あれば拾う神ありやなー。

彼はしみじみそう思いながら、警察を出てしばらくすると、くだんの事故係が別のことに気がつきました。

事故係
事故係

あれ? おじいちゃんメガネは?

おじいさん
おじいさん

ああ、ツルが折れてるからはずしとる

と、メガネを取り出しました。

事故係
事故係

あらー、これは物損やなぁー

なんですと?!

またも警察に逆戻りです。
先ほどの警察官も、あいた口がふさがりません。

警察官
警察官

ほんで、物損にせえてか!!

事故係
事故係

…。

警察官
警察官

早よ持って帰れっ!

警察官は、書類を投げてよこしたそうです。

そりゃそうやわなぁ…。
誰も嬉しないわ。

ヤリキレナイ話です。

みなさん、お年寄りには席を譲りましょう。
そしてお年寄りのみなさん、席を譲ってくれる人がいたら、お願いですから素直に座ってあげて下さい。

なんでやねん(T^T)

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公務員の事情

普通に考えると、どう考えてもおかしいようなことでも、お役所で勤めた経験のある方に言わせると、「ありがちだよね」とのこと。

某市役所でアルバイトをしていた知人いわく、

特にお仕事がお出来になる公務員さんにとってもありがち。
もうほんとなんてんですか?  真面目でいらっさるんですよ。
あと揉め事がお嫌いなんです。
うちの職場もそうなんだけど「もめなければそれでいい」そうです。 ええ苦情が来ようが、市民に不快な思いをさせようが、です。
和を持って尊しとする。 公務員っていいですね!  えへ!

らしいです。
聖徳太子も草葉の陰でタメ息ついてそうですな(^^;

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女将のひとりごと

運転手さん達は、元トラックドライバーなどの『豪快ゴーカイさん』が多いのですが、この事故係の人たちは、いわゆるキャリア組ってやつなんでしょうか?

あちこちに民営化の波が押し寄せてきている昨今、さすがに役所の民営化は無いでしょうが、彼のいたような地方の交通局などは、次々に民営化されているようです。

そうなると、もう「お役所仕事」は通用しなくなると思うのですが、どうなんでしょうね…。
あ、でも”キャリア組”には、何かしら抜け道があるのかもしれませんね。(-_-;

法治国家ですから、各種規定や法律は遵守じゅんしゅすべきです。
遵守すべきではありますが、それを逆手さかてに取ったり利用したりするのはいかがなものか?

なんかね、もうちょっと正々堂々と渡り合える世の中であってほしいですよね。

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